五行理論
五行理論は陰陽理論とならんで、中国古代哲学の双璧をなすものです。いにしえの人々はこれによってものごとを解析し、認識してきました。風水だけでなく、漢方医学など歴史のあるものはほとんどが、これらの理論によって整理されてきたのです。近代科学が発展したのはここ数百年、それ以前の数千年はこれらが支配してきました。古く歴史のあるものがすべて良いとはかぎりません。ただ、今日の科学の進歩をみてもわかるように、昨日の常識は、かならずしも今日の常識ではありません。また、今日の常識は、かならずしも明日の常識ではありません。それに対し、数千年の淘汰に耐え、生きのびてきた五行理論・陰陽理論は驚嘆に値するものではないでしょうか。
これらの理論は現代の中国人を含め、すでに欧米的な考えが脳裏を支配しているわれわれにとっては、なかなか理解に苦しむものです。理解してから使うよりも、使いながら体感していった方が良いと思います。
五行とは木・火・土・金・水のことです。いにしえの人はこの5つのものが,もっとも基本的な要素であると考えました。そして、すべての物がこの5つの要素の相互関係の変化からなると考えました。五行理論の内容は、すべてのものを5種類のグループに分類する基準と、この5つの要素の相互間の関係です。
1.五行による分類(5種類のグループに分類する基準)
「木」に似た性質をもつものを{五行の「木」に属する}、「火」に似た性質をもつものを{五行の「火」に属する}などといいます。五行理論で分類すると春は「木」に属し、夏は「火」に属します。分類の基準はつぎのとおりです。
〔木に属するもの〕 外に向かうもの、成長、のびる性質のもの。
〔火に属するもの〕 熱い、上に昇る性質のもの。
〔土に属するもの〕 養う、はぐくむ、受け入れる性質のもの。
〔金に属するもの〕 静粛、収れんする性質のもの。
〔水に属するもの〕 冷たい、下に向かう性質のもの。
2.五行の相生・相剋(5つの要素の相互間の関係)
この5つの要素は、一方がもう片方を助けたり、あるいはもう片方のジャマをしたりします。
助ける関係を相生(生じる)といいます。火に木(マキ)をくべると火はより強くなるので、木は火を助けます。これを「木は火を生じる」といいます。また、火の(燃えた)あとには土(灰)が出るので、火は土を助けます。これを「火は土を生じる」といいます。相生の表を参照してください。
相生の表 |
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助ける方 |
助けてもらう方 |
相生の説明 |
木 |
火 |
木は燃えると火を生じる。したがって「木は火を助ける」 |
火 |
土 |
火が燃えて灰、すなわち土を生じる。したがって「火は土を助ける」 |
土 |
金 |
土の中からは金(金属)が出る。したがって「土は金を助ける」 |
金 |
水 |
金(金属)は温度差によって水(水滴)が付く。したがって、「金は水を助ける」 |
水 |
木 |
水を与えることで木は生長する。したがって、「水は木を助ける」 |
邪魔するのを相剋(剋する)といいます。木の根っこは土の流出をおさえます。つまり土にとっては自由をうばわれるので、木は土の邪魔をします。これを「木は土を剋する」といいます。また、土(土のう)は水をせきとめることができます。つまり水にとっては自由をうばわれるので、土は水の邪魔をします。これを「土は水を剋する」といいます。相剋の表を参照してください。
相剋の表 |
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邪魔する方 |
邪魔される方 |
相剋の説明 |
木 |
土 |
木はその根で土を流れないようにする。したがって、「木は土を邪魔する」 |
土 |
水 |
土(土のう)は水をせき止める。したがって、「土は水を邪魔する」 |
水 |
火 |
水は火を消す。したがって、「水は火を邪魔する」 |
火 |
金 |
火は金(金属)をとかす。したがって、「火は金を邪魔する」 |
金 |
木 |
金(金属)は斧にすれば木を切ることができる。したがって、「金は木を邪魔する」 |
5.補足
五行の相関図です。
青い矢印:相生、すなわち助ける関係を表します
赤い矢印:相剋、すなわち邪魔をする関係を表します
6.私見
五行理論で言うところの木・火・土・金・水は、実際の木、火、土、金、水と理解しないほうが良いです。
むしろ以下のように考えたほうが良いでしょう。
〔Aに属するもの〕 外に向かうもの、成長、のびる性質のもの。
〔Bに属するもの〕 熱い、上に昇る性質のもの。
〔Cに属するもの〕 養う、はぐくむ、受け入れる性質のもの。
〔Dに属するもの〕 静粛、収れんする性質のもの。
〔Eに属するもの〕 冷たい、下に向かう性質のもの。
つまり、上記のような性質で、分類してゆく方法が五行理論です。
昔は錬金術と言って、「金」を作ろうとしたようですが、もちろん金は作ることができませんでした。この五行理論を曲解していたようです。
面白いことに、日本の曜日は、五行に「月」と「日」(太陽)を加えて1週間になっています。中国では「星期一」「星期二」「星期三」・・といって、数字で表現します。
このことから、日本には古くからこの五行理論が伝わっていたのでしょう。もっとも、曜日自体は相生や相剋の順番ではないので、どのように順番を定めたのか、興味あるところです。
ここでは、五行理論が「分類方法」と説明いたしましたが、さらにつきつめた推測などを入れると、「エネルギー」や「気」ではないかと思います。
すなわち、「外に向かうもの、成長、のびる性質の気」、「熱い、上に昇る性質の気」といった具合で、「気」を分類したものです。
通常、人間には形のあるものしか見ることができません。そのため、「気」などは空想の産物などと論争が起きました。まだ、「気」が存在しないと思っている人は多いので、ここでは、「エネルギー」と言い換えてもいいでしょう。